病名の恣意的拡張運用の問題点。

風邪と言う病名は病名で有る以前に一般名詞で、体調不良の他者を見て、「風邪ですね、病院に行った方がいいですよ、お大事に」と言うのは取り立てて珍しくは無いです。
一部の医師の不評は買っていると聞きますが、専門医で無いものが、「その症状、風邪かインフルエンザじゃないですか?今インフルエンザが流行してますからね」と声を掛けるのも問題ではないです。
病状が進行する前に病院に行くよう本人に注意を喚起し対処を促すのはいいことです。
更に風邪・インフルエンザ等の感染症から職場・学校等への集団二次感染拡大防止の為の危機管理上も有効と思われます。


では、「貴方はアスペルガーじゃないの?」って指摘するのは如何でしょうか?
アスペルガー症候群/Asperger syndrome/AS/アスペルガー障害は現在比較的知名度有る病名の一つでしょう。


本来病名は専門医が患者に直接対峙して、問診を行い、診断をして初めて病名が診断されます。
其れは風邪・流感/インフルエンザも同様です。


病名と言う専門用語の運用目的を考えてみます…。
病名に依って分類する事は医療/治療行為に役立つから行っている訳です。
病名と言うのは本来医療目的の為に存在する訳です。
病名に依ってレッテル付けが行われ、病状が固定されたら本末転倒と申せます。


「疑わしきは被告人の利益に」と言う裁判の基本理念が有ります。
同様に、病名は患者の利益に成らないと意味が有りません。
病名は医療/治療行為有りきでなければ。


癩病」の名前で知られていた、「ハンセン氏病」。
癩菌の感染症ですが、治療薬で完治する病気です。
然し、国策で隔離政策が行われ、患者の利益に成らない結果を齎しました。


病名と言う専門用語は時に人をレッテル付けし、社会から隔離したり、差別したりするのに誠に便利な言語ツールと言わざるを得ないです。
アスペルガーの症状が疑われる、若しくはアスペルガー症候群の患者で有っても、症状に依るのでしょうが、社会参加には問題ないのが実体と言えるでしょう。


病名には少し位運用に慎重に成っても困らないかとは思います。
精神疾患・障害の場合、既に社会参加をしてる場合、多くは緊急性が無いので振る舞い・言動から病名を安易に推測し、当て嵌める前に、社会性に問題有る振る舞い・言動が有るなら、其の点を指摘し、議論するだけで十分な様に思われます。
少なくとも専門医で無いものが病名判定しても何も意味が有りませんし。
精神疾患名は恣意的拡張運用しない方が問題は少ないと思います。


精神疾患精神障害の病状を呈するのは誰もが負うリスクと受け止め、社会的不利益が深刻で無い限り、精神疾患精神障害患者の社会参加を極端に制限しない方向に向かえば良いと思います。
勿論、専門医等の支援に依るマッチングが前提ですが。
無理矢理過酷な社会環境に放り込んで、本人が処理出来ない社会的役割を担わせるのは本人にも社会にも不幸ですし。


俗な言い方で、「誰得?」ってのが有りますが、其れを意識すると問題は割りと分かり易いです。


罵倒するなら、「馬鹿」、「阿呆」とかの伝統的自然言語を使った方が寧ろ使い易いかとは個人的に思います。

結論:症状が良く知られている風邪の類の病状と違って、精神疾患精神障害の病名の恣意的活用は本当の病状の理解を妨げるだけでなく、その病気・障害を罹患してる患者に対する社会的差別・偏見を助長/肯定する可能性が有り、そこん処を是非考慮して頂けると助かります。